地域との「関わりしろ」の作り方

6月15日・16日と、静岡県掛川市に行ってきた。このブログは、その後編。ツアーそのものよりも2日目のフィールドワークと私の考察にスポットを当てます。
→ 前編はこちら

■掛川・倉真地区を巡るフィールドワーク
2日目は早朝からスタート。NPO法人時ノ寿の森クラブさんが運営する掛川・倉真地区の「時ノ寿の森」にあるログハウスに集合し、地元の食材を使った朝食。屋外で食べる食事は美味しいですね。ちなみにこの日は、昨日の嵐が嘘のような青空でした。

その後、NPOのみなさんの案内で里山の散策。このエリアは、数十年前一度廃村になっているそうです。その時の最後の住人が「このままでいいのか?」と悩み、再び里山を復活させることを誓ったそうです。
一度人の手が入った里山は、人の手が入らなくなると一気に荒れていきます。そもそも人が入って森を整備した以上、自然は人工的に介入を受けています。それを手放したところで、スムーズに自然の生態系に戻るわけではありません。杉などの植樹林が生い茂った結果背の低い草木に光が当たらなくなるなどの問題が起きます。辺りは薄暗くなり、稀に人が入っても危険な場所になります。

NPO法人時ノ寿の森クラブは「いつか森をこうしたい」という「夢マップ」を作り、これを指標として里山づくりを進めてきたそうです。その結果、NPOには老若男女・県内外問わずに人が集まるようになり、ヤギの飼育、子どもたちが遊んだり自然を体験する場所作り、ゲストハウスのオープンなどが進んでいます。

一方で、解決し難い課題も感じました。
たとえば掛川の名産品であるお茶の農家さんを訪問しましたが、お茶のニーズは年々減っており、廃業する農家が続出。それを止めるために、若手農家が廃業農家の土地を譲り受けるなどの努力を続けていますが、お茶の需要は昨年比2割も減少、売上も2割減少しているそうです。
これが私の仕事のように形のないものであればあっさり事業転換するでしょう。しかし、農業などの土地や伝統を背負う人は、そうは簡単には事業転換できません。これは自分の実家を見ても同様です。なんともしがたい難しさを感じます。

■「魚の切り身が泳いでいると思っていい」への違和感
実は、ここのところ引っかかっていたことがあった。それはある人に「自分の子供が“魚は切り身で泳いでいる”と思っていても別に構わない」と言われたことです。

「これから地球の人口が増えれば、我々は人工肉・人口魚を増える機会が増える。であれば魚が本来どんな形かなんて、別に知らなくてもいいんじゃないか。」

というような主張だったと思います。私はこれを聞いた時の圧倒的違和感を感じたのに、自分の意見が言えなかった。考えがまとまらなかった。
でも、この里山を歩いていて思った。やっぱりそれは、如何なものか。

というのも、この主張は、「魚」を「食料」としか見ていないから成り立つロジックじゃないか。でも、魚も肉も生き物であり、命であり、進化の歴史であり、文化であり、環境要因であり、私たち自身の生活に影響を及ぼしたり及ぼされたりしている。「魚は切り身で泳いでいる」を認めたら、彼らが与えてくれる様々な影響を感じ、教授する機会を捨てることになると思ったのです。だから私は、これからも若い世代に、魚や動物、植物たちと関わる機会を持って欲しいと思った。そういう結論が出ただけでも、ここに来た意味があった。

■地域との「関わりしろ」の作り方

フィールドワークを終えると、最後にグループワーク。今回のテーマである「地域との”関わりしろ”の作り方」についてチームに分かれて話し合いました。
※「関わりしろ」とは、これからの新しい関わり方の可能性です。「しろ」は「のりしろ」の「しろ」のこと。

議論を円滑に進めるため、運営側から14個の切り口が提案され、そこから2つをチョイスしてグループに分かれて意見交換しました。
私が選んだのは「これからのゲストハウス」「企業の関わりしろ」
グループの中からは多種多様な意見が出ました。みなさん、何かしら地域に関わる仕事をされている方たちなので、ワクワクする意見がたくさんあった。
全部は紹介できないので自分の考えだけ紹介して、この記事を最後にします。

◎テーマ1「これからのゲストハウス」
「モクモク・ハウス」自営業者で、PCと電話があればあらかたの仕事が出来る私は、「旅をしながら仕事をする」という生き方を理想としています。でもいざ旅に出ると、観光に夢中になることも多々あり……。
そこで、ハッカソンや開発時の「モクモクタイム」みたく、ゲストが自然豊かな里山のゲストハウスに閉じこもって、タスクに集中できる環境を整えたらニーズがあるんじゃ無いかと思いました。
かつて「夢を叶える自習会」という勉強会をカフェで主催していた時期があります。タスクを抱えた人間がカフェに集まって勉強する会。これの宿泊版のイメージです。
実際3月末に友人と仕事を抱えて熱海の温泉に缶詰になってみたけど、結構良かった。これを里山で出来ないものか。
モクモクに限らず、テーマを決めたゲストハウスはニーズがありそう、と他のメンバーからもいろんなアイディアが出ました。例えば「積ん読本を消化するためのゲストハウス」とか。これも面白いと思った。

◎テーマ2「企業の関わりしろ」
CSR、サテライトオフィス、新人研修などなど、里山や一次産業などの一次産業に目を向ける企業は多い。でも、実際にアクションまで動くところは少ないし、動いても担当者の異動などで頓挫することもあります。これに対してどうアプローチしたらいいか。

これについては、私は里山を管理する側(NPO、自治体、森林組合他)にも多分に責任があると思っていて、「そもそも里山と組むことでただの形式的CSR以外にどんなメリットがあるか」を示せていないのではないかと考えています。
そこで仮説として「企業向けのあらゆる関わり方のプランをまとめた営業資料」があるだけで企業巻き込み率が上がるんじゃ無いかと思いました。我々が実業で企業にアプローチするときは営業資料があるのが当たり前なわけで、同じように「里山と関係する20のメリット」とか「企業事例100」とか資料を作って、価値を可視化する必要があると思う。

こうして、1泊2日の掛川ツアーも終了。個人的には、とにかく2日目の空の青さと緑の深さが素晴らしかった。

そして、これは他の活発な地域とも共通なんだけど、やっぱり元気な地域には、自分自身が熱狂しているキーマンがいて、巻き込み力が半端ないと思った。
私を巻き込んだ越智さんの「掛川が大好きで、大好きで…」という思いもそう。その越智さんが掛川にハマるきっかけも、NPO法人時ノ寿の森クラブの理事長の思いに惹きつけられたからだという。

地方創生において私がお手本にしている人の一人に、「東北食べる通信」を作ったNPO法人東北開墾の高橋博之がいる(親しみを込めて敬称を省きます)。
彼が頻繁に「グランドに降りろ」と言っていた。

地域課題の解決には熱いプレイヤーが必要で、熱いプレイヤーを生み出すには、熱い想いを持つ人が必要なんだと、再認識するツアーでした。

改めて、誘ってくれた越智さん、掛川のみなさん、ありがとうございます。
また遊びに行きます。

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