美しき都市、シンガポール④ 〜植物と、動物と、共存について〜

さて、いよいよシンガポール旅行記も最終回です。

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最後に、私が抱くシンガポールのイメージに影響を与えた2つのエリアについて紹介します。
1回目で、私はシンガポールの印象を下記のように書きました。

一言で言うと、とにかく美しい。
それは、都市がきれいとかそういう話だけでなく、思考が美しいというか、プロセスが美しいというか、頭の良い都市だと思った。

この感想をある友人に言ったら、「そりゃあ、頭がいい人達が集まって作った街ですから。」と言っていて笑った。もちろん、シンガポールにも格差があるし、エリアによってはいわゆる東南アジアの他の地域に通じるものも残っている(それはそれで私は好き)。でも、あのエリアで暮らし続けるには相当の収入、つまり経済的成功が必要なのは事実。自然と、頭がいい人が集まるというのも納得。
その、ゆとりのおかげなのかもしれないが、人は基本的に穏やかで、寛容で、通りすがりの外国人にも優しいし、街の作りが優しい。国土が限られているシンガポールは、基本的に建設と埋め立てで出来た人工のアイランドだ。昔からの土着の植物は残っていないらしい。
元在住者いわく、すすき一本、植樹らしい。そして、若い街路樹にわざわざ苔を移植する。それによってはるか昔から生えていた木のように演出をしているらしい。

こう聞くと、もしかしたら上辺だけの理想郷に聞こえるかもしれない。でも、私はそうじゃないと思う。
景観を美しくデザインすることと並行して、すごくナチュラルに、ストレス無く、自然との共存や、地球の歴史と人の関わり、エコやスマートシティに関する情報発信がなされている。過去と現在を把握した上で、この国や人々が目指す未来を提示している。こういうところが、「思考が美しいというか、プロセスが美しいというか、頭の良い都市だ」と思った。

■ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ

ガーデンズ・バイ・ザ・ベイは、滞在中最も心を動かされた場所かもしれません。マリーナベイ・サンズに隣接する広大な植物園です。正直、ここまで大きなものだとは行くまで思っていませんでした。屋外の植物園が有名ですが、その他「クラウド・フォレスト」や「フラワー・ドーム」などの屋内施設もあります。

屋外のエリアは、昼と夜で全く違う表情を見せます。個人的には両方行ってほしいですね。
下記は、夜に行われるナイトショーの様子です。遠方の展望台からだったので音がいまいちですが、実際には音楽に合わせて光のイルミネーションが瞬きます。

ファイナルファンタジーの世界ですね。

ここを、ただ技術に物を言わせてインスタ映えする庭を作っただけと思うなかれ。ここの植物たちは、常に成長を続けています。この木の形の骨組みに沿って、毎日毎日成長を続けている。生きている森そのものなんです。
ただのアトラクションではないのだということは、「クラウド・フォレスト」に行くとわかります。

■クラウド・フォレスト

ガーデンズ・バイ・ザ・ベイの中にある巨大な植物園で、広大な滝が流れ出す人工の山に高地の環境が再現されています。エレベーターで最上階の6階まで上がり、通路を周りながら下っていくのですが、所々で高地の環境についてのレクチャーや、環境がいかに変わりやすいものかのインプットがあります。
そして、ここが最も衝撃を受けたところなのですが、地下まで行くと、突然暗い部屋に行きあたり、それまでの美しい世界とは真逆の、ゴミ問題、重油の流出、山火事、ヒートアイランド、ありとあらゆる環境問題のインプットが、ビジュアルで衝撃的に展開されます。全く別の世界感に放り込まれるんのです。しかも陳腐な展示ではなく、クリエイティブのレベルが高い。書籍「100年の愚行」を思い出しました。押し付けがましい道徳観ではなく、とにかくエモーショナル。思わず足を止めずにはいわれない。

そしてその次のフロアで、このガーデンや、シンガポールそのものが、いかに自然との共存のために工夫を凝らしているかが伝えられます。前の展示で心を痛めていたところに、救いのようにシンガポールの社会が降臨する。これぞ、スマートシティなんだ、と。この演出もイヤミがなく、自然と脳に入ってきます。

最後にふたたび美しい植物にふれあい、自然がいかに尊いかを再認識して、フィニッシュ。非常に良い作りだと思いました。

■シンガポールの3つの動物園
もうひとつが動物園。シンガポールには3つの代表的な動物園があります。

シンガポール動物園 … 人と自然の距離が近く、自然を身近に感じられる
リバーサファリ … 川辺の動植物を中心に紹介
ナイトサファリ … 世にも珍しい夜のみの動物園。

一人旅で、わざわざ海外で動物園に行くこともないのですが、ここは「ぜひ3つとも行ってほしい」と元在住者に言われました。シンガポールの動物園は世界中から関係者が視察に来るほどクオリティが高く、あの旭山動物園も参考にしているのだそうです。とは言え3つは無理でしょ、頑張って2つ、、、ということで、シンガポール動物園、ナイトサファリに行ってきました。この3つ、実は隣接して建てられているのです。なので、はしごして回ることができます。マリーナベイからはMRT+バスでもシャトルでも1時間以上かかりますが、行く価値はあります。はしごする場合は割引券があります。

■シンガポール動物園
ここが、一番オーソドックな動物園です。ただし、何しろ動物との距離が近い。なんというか、ジャングルの中に動物園を作ったというか、日本の動物園のように、檻々していない。真横をワラビーが駆け抜けたり、よくわからない巨大トカゲが道の真中で寝ていたりする。ここでの主役は、人間でなく動物たちだ。

かなり広大なので、中に入ったら地図を見てルートを考えましょう。アニマルショーのクオリティも高かったですよ!

■ナイトサファリ
世にも珍しい、夜限定の動物園。夜行性の動物たちの、夜のありのままの姿を見ることができます。動物の夜の生態系というのはまだ解き明かされていないことも多く、このナイトサファリは世界的にも研究が進む施設なのだそうです。もちろん、動物の理解の先にあるのは、人との共存です。

人数に応じて入場時間に制限をかけています。少し早めに行ってチケットを買っておくことをオススメします。また、園内を一周するトラムは乗車必須です。園内は、徒歩で回れる場所と、トラムでしか回れない放し飼いゾーンに分かれています。ちなみに、トラムには各席の前にイヤフォンジャックがあり、有料のイヤフォンを差し込んでボタンを押すと、希望の言語でインフォメーションが流れてきます。こういうの便利でいいですね。

普段、東京暮らしではないですよね。
真っ暗な森の中を、無視の鳴き声とか、猛禽類の声とか、ときにトラやライオンの咆哮を聞きながら、ふらふら、そろそろ、自分の足で歩き回る。深い草の香りに、時たまレモングラスの爽やかな香りが交じる。不安になるかと思えば、そうでもない。むしろ心地良い。

それはもしかしたら、高度に管理されたシンガポールの動物園が見せる幻想かもしれないけど、こういうことで人は、自然環境に親しみやありがたみを見出す。ここで育った子どもたちは、有意義な経験をしていると思う。

■共存すること、依存ではなく、理解し合うこと。
ガーデンズ・バイ・ザ・ベイにしても、動物園にしても、通常の街中の様子でも、シンガポールで深く感じたのは「理解と共存」だった。違いを知ること、そして理解すること。それって、実はすごく難しい、違いを知ったら嫌いになることも、認めたくないこともたくさんある。でも。それを認め合う賢さと、未来志向みたいなものを感じる街だった。
すごく洗練されていて、すごく賢くて、すごく美しい。

日本はすごく窮屈だと感じることが多い。
いろんな「べき論」に縛られている。特に、農村で育った私は、それが馬鹿げていると思いつつ、いろんな「女性ならこうあるべき」と、自分の本来のアクティブな性格の間で心が千切れそうになることが多い。
そうじゃない。
もっと、人は人、私は私、あなたはあなたって、自分と他者を、愛を持って切り分けることができたら、世界はもっと生きやすくなる。

シンガポールを私に勧めたのは、親しい男性だった。
その人にはじめて好意を持ったのは、二人で飲みに行ったときだった。
「忙しくてどうしてもたまに電車の中でメイクをしてしまう、でも、世の中は結構厳しいよね。」という話をしたときに、「いいんじゃない? その人にはその人の事情がある。本来なら、誰にも否定はできないよ。」というようなことを言ってくれた。ささやかだけど、1人の人間として許された気がした。

どうしても、距離感が近くなると、依存したり束縛したりしたくなる。
でも、それじゃ何もうまくいかないって知っている。
男女の話だけじゃなく、仕事上の付き合いも、友達同士も、都市と地方も、日本と海外も。

そんなとき、ひとつの目指すべき世界観として、シンガポールは美しく輝いていた。

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