「週刊ダイヤモンド」「週刊東洋経済」 2018年予想読み比べ

なんとなくここ数年、年始に習慣化していることの一つに、「週刊ダイヤモンド」と「週刊東洋経済」が年末年始に出す年間予想号の読み比べがある。

『週刊東洋経済』(12月30日・1月6日合併号)ー 2018大予測 波乱の年を140テーマで見える化!

で、全部一気に読み比べるのは結構骨なので、まずは各誌の冒頭の巻頭対談・インタビュー企画を読んだのだけど、これが面白い。どっちがいいとか言わないけれど、同じ「2018年」でも、論者によってこう変わるんだなあ、とか、切り取る角度によってそう言えるんだなあ、とか。せっかくなので、まとめました。細かく知りたい方は雑誌買ってください(笑)

◾️全体構成
巻頭以外にも話が及んでしまうけど、まず、各誌の構成についてちょこっと触れておきます。

週刊ダイヤモンド 
巻頭特集などはナシ。いくつかの広告の後にすぐに「総予想」に入ります。
大ジャンルとしては「経済」「国際」「金融」「産業」「政治・社会」「スポーツ・文化」と分かれています。さらにそれぞれの分野に細かいトピックスがあり(例:「経済」であれば「景気」「株価」、「国際」であれば「北朝鮮」「米国」など)、合計116の”総予想”を読むことができます。

週刊東洋経済
一方東洋経済は、「大予測」として巻頭に対談企画・6名のインタビュー企画があります。その後、「さらば平成」「世界政治・経済」「日本政治・経済」「株&マネー」「ビジネス」「スポーツ&エンタメ」と続きます。各章が細かいトピックスに分かれているのはダイヤと一緒ですね。

ただし、「週刊ダイヤモンド」も一番最初の「経済」のパートに対談企画があり、これが「週刊東洋経済」でいう巻頭対談企画の役割を果たしている印象です。なので、このブログでは週刊ダイヤモンドの「経済」パートの対談と、「週刊東洋経済」の巻頭対談・インタビューについて触れようと思います。

共通点としては、どちらもやはり「高齢化」が問題の中心にあること。そしてキーワードは「イノベーション」
違いとしては、ダイヤが「日本人×日本人」で、東経が「外国人×外国人」、そして両者の温度感が違うと思いました。

 

◾️週刊ダイヤモンド
一橋大学大学院教授 楠木 建 氏 × 立正大学教授 吉川 洋 氏
「イノベーションせよ!!」

<要約、または落合の主観による意訳>
日本は今後、100年かけて100年前の人口5000万人に逆戻りする。しかしこれを、ネガティブな印象だけで捉えなくてもいいのではないか。「経済成長」のために重要なのは人口よりもむしろGDP。そして、GDPが高い国は、ルクセンブルク、スイス、マカオなど小国が多い。もともと日本は、江戸時代から狭い国土に人口が多すぎることが問題だった。なので、人口減少を嘆くのではなく、人口減少でGDPが減るという予想を嘆くべきである。
しかしこれは解消の余地があって、それがイノベーションである。ここで重要なのは、「イノベーション」は「すごい進歩」ではないということ。「進歩」は時に、「瑣末なアップグレード」になりがち。「携帯に入る音楽が何曲から何曲に増えました!」とかそういう話ではなく、「問題解決」につながる新しい発想や技術が求められている。
日本のように、ある意味行き詰まっている社会はイノベーションが生まれやすい。高齢者という課題を世界に先んじて抱えているわけで、ここで課題解決として生まれたものは、今後世界に波及できる可能性が高い。例えば高齢者向けの紙おむつ市場などがそれに当たる。日本は、ある意味新しい価値を生むための実験場と言える。

<落合の私的な感想>
前向きだなあ、というのが一番の感想。イノベーションが鍵なのは指摘の通り。ただ、それが起こせる社会構造になれるのかが鍵だな、と。これは法規制の問題もあるし、変化に弱い日本人という人間性の問題であったり、私にはあまり、「イノベーションが起こせる気配」が感じられない。
一方で、日本は戦後確実に急成長したわけで、私レベルの人間が「ムリじゃね?」というのもおかしな話で。諦めるのは簡単だし、ニヒルなのはかっこよく見えるけど、そうならないように、自分もイノベーションに関われるような人間にならないとな、と。

 

◾️週刊東洋経済
英「エコノミスト」元編集長 ビル・エモット氏 × ロンドン・ビジネススクール教授 リンダ・グラットン氏
「高齢化ニッポンの課題 これまでの働き方は崩壊 企業は大変革を迫られる」

<要約、または落合の主観による意訳>
「100年時代」を悲観的に捉えるのは、「定年後40年も病気を抱えてやることもなく生きていく」というイメージがあるから。そうではなく「もっと多くのことをする機会がある」と捉えた方がいい。でもそのためには働き方を変えないといけない。これまでは、フルタイム教育→フルタイム労働→定年・死去。しかし今後はこの「定年後」が長いわけで、そのためにはマルチステージでもっと自由なキャリアを築かないといけない。そのためには終身雇用という時代を終えて、企業が変わらないといけない。
また、日本は高齢化と同時に少子化も進んでいるが、これも企業の人事政策によるもの。「長時間労働・企業へのコミット」と「終身雇用」とがバーターだった社会は女性のがキャリアと家庭の両立を難しくしたし、男性の家庭参加率を下げた。労働に関して日本の女性が今体験しているのは、1950年代のアメリカで起きたことと同じ。今後、マルチステージの働き方が望まれる中で、一つのことにコミットメントすることは悪影響が大きいし、それよりも生産性の向上を目指すべき。「100年時代」は生涯に渡り学び続けることが必要。長く働くのも学ぶのも悪いことじゃない。キャリアの途中で長期休業して人生を見つめ直す旅に出たり、大学で学び直したり、新しい挑戦をしたりしていいし、そうやってキャリア形成しないといけない時代。そのためには日本企業は変わらないといけない。年功序列も変えるべき。報酬は仕事の内容やスキルで決めるべき。
また、日本は起業人口が極端に少なくイノベーションが起きにくい。これは大企業が日本経済を支配し、起業やイノベーションの芽を摘み取っているから。ここを解消しないと、社会課題の放置につながる。
日本は世界で最初に超高齢化社会に取り組む国としてその動向が注目されている。そのためにはテクノロジー(ロボット・AI)をどう活用するかが重要。もう一つは、企業によって歪められた家族のあり方を見直し、女性の生き方・働き方を改善していくいことが必要。

<落合の私的な感想>
 すっごく失礼なことを言うけど、「この人、オワコンだなあ」と思う中高年が多い。「年上にそんなことを思うのは失礼だ!」という概念があるから口にしないけど。でも、この記事を読んでいたら、「あ、オワコンはオワコンだし、オワコンだって思うことは悪いことではないんだ」と思った。そのくらい、日本人は社会に出ると学習しない人が多い。私も子供の頃、「勉強は子供の仕事、大人になったら勉強する時間もないのだから」と言われて、強迫観念のように勉強していた。でもこれって、これまではそれで良かったのかもしれないけれど、今後は確実に回らなくなる。私たちは長い人生を常に変化しながら行きていかなければいけないし、それはワクワクすることだ。

※ちなみに東洋経済さんはこの対談以外にも巻頭インタビューがいくつかあります。それも非常に興味深い内容でした。

 

とまあ、こんな感じでした(かなり意訳しています)。
文章量を見ると、私個人としてはどちらが好みかすぐにわかってしまうと思いますが、目的は比較ではありません。双方学びと気づきがありました。ご関心ある方は、まだ店頭にも並んでいますので、ぜひ手にとってみてください。

全くの余談ですが、私が「好きなビジネス書」としてよく挙げるのが、日本人著者なら楠木建さんの「ストーリーとしての競争戦略」で、翻訳本ならリンダ・グラットンさんの「WORK SHIFT」「LIFE SHIFT」なんですよね。そんなこともあり、どちらも興味深く読ませていただきました。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です