【書評】LIFE SHIFT~100年時代の人生戦略~

2016年ほど本を読めなかった年もなかっただろうというくらい、多忙だった。

これは全然自慢にならない。コンサル職としては、知識のインプットがないのはだいぶ問題である。
私の場合は、ある程度割り切って、書籍から知識を得るよりも、人に聞きに行ったり学ばせてもらったり実践したりに比重を置くようにしているとはいえ、問題である。

そこで、年末の旅行に何冊か本を持って行った。
その中でも特に優先順位が高かったのがリンダ・グラットンとアンドリュー・スコットの「LIFE SHIFT~100年時代の人生戦略~」(東洋経済新報社)だ。

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リンダ・グラットンは「WORK SHIFT」の時に、「私が日々感じていた職の変化を言語化してくれた!」と感激して以来ファンで、今回の本は「年末の自分を見直す時期だった」というのと「WORKからLIFEへ」という2点で、この時期に読むべきと判断して購入した。

結果、年末年始に読むべき1冊として選んで正解だったと思った。

まず、序章で今回のサブタイトル、「100年時代の人生戦略」の意味を知って、「ああ、おっしゃる通り!」と思った。
この「100年」というのは、我々の寿命のことだ。諸説あるが、これからも寿命は伸び続け、今生まれた子供たちの平均寿命は100歳を超える可能性が高いそうだ(もちろん、平均であり、しかも生まれた地域にかなり左右される)。

そうなると、何が起こるか。
端的なところだと、金銭面。今のライフプランでは、多くが老後破産を迎えるのだ。
例えば一般論として、多くのビジネスマンが下記のイメージで生活設計をしているとする。

1.老後の生活資金   … 最終所得の50%
2.長期の投資利益率 … 年平均3%
3.所得上昇のペース  … 年平均4%
4.引退年齢       … 65歳

うんうん、そんな感じ、と思う人は多いと思う。
でもこれ、引退後の期間が延びれば伸びるほど、2か3の数字を上げるか、1を下げるか、または貯蓄を相当するかしなくてはいけなくなる。
これ、認知されているのかもしれませんが、私はあまり想定していませんでした。
まあ、私は「人生の終わり=定年」という環境で育って、自分もそういう生活をすると思っているから、気にならないというのもありますが。

本書の中には、具体的に3つのライフモデルを掲げて、生まれた年代によっていかにライフがシフトしていくかをわかりやすく説明してくれています。
3つのモデルというのは、具体的に1945年生まれのジャック、1971年生まれのジミー、1998年生まれのジェーン。
例えば、ジャックの人生はこの年代の一般的なモデルを取って、42年間の勤労期間中に1回だけ転職して、所得の4.3%を貯金して、引退後8年生きて、はい、あがり。
ところがジミーになると、約20年の引退後の期間がある。ジェーンに関しては引退後が35年になる(もはや勤労期間と大して変わらない)。
この場合、仮にジェーンが、上記の「一般論としての人生設計」の通りに働いたとすると、収入の25%を老後資産として積み立てなければならなくなる。
もはや、老後破産の前に若年破産するレベルですわ。。。

と、ここでリンダ先生。

そうなると、私たちは抜本的に暮らし方を変えなくてはいけないよね?
そもそもの寿命が違うんだから、実はこれまで一般的とされていたライフプランなんて全然あてにならなくなるのよ。先進国は特に超高齢化社会で、余計にひどいことになるわよ。
というのが、この本のスタート。

じゃ、どうする?

実際に社会は変わってきているし、生き方を変えてきている人たちがいるよね。
雇用されるのではなく次々に新しい仕事に携わっていくギグ・エコノミーや、シェアリング・エコノミーなどが増えてきたのもそう。
色々なプロジェクトに同時に関わるポートフォリオ・ワーカーも増えてきたよね。

私たちは、これまで通りの暮らしじゃ、もうしんどくなりますよ。
だって、前提が破たんしているんだもん。

だから、人生の資産をもう一度見直す必要がありますよ。
特に、目の前のビジネスの給料や今持っている金銭的資産ではなくて、「無形資産」ね。

寿命が延びるってことは、それだけ経済や社会構造や企業の在り方や価値観がドラスティックに変化する瞬間に立ち会う可能性が高い(というかそういう変化を経ないと破たんする)わけだから、目先の資産ももちろん大事だけど、そういう変化に対応できる「無形資産」について考えてみようよ。

それには3種類の資産があって、スキルや知識の「生産性資産」、肉体的・精神的な「活力資産」、多様な時代を生き抜ける「変身資産」と名付けましょう。

みなさん、この資産を見直しながら人生設計をすることが今後は重要です。あと、今後ITの発展で現在ある仕事の半分くらいは消滅しちゃうと言われているから、そのあたりも加味して、人間でできないと思われる仕事を選んだほうがベターね。
そして肝になるのは、「結局私はどう生きたいのか」という点だから、そこは本当にしっかり自問自答して。

これからの社会は、生き方が多様化する分、今以上に個々人が「私って誰?」という問いを真摯に繰り返し、要所要所で選択していかなければならなくなるの。「半端な願望には標識も全部灰色だ。」は宇多田ヒカルの歌だけで十分ね。

上記のことを考えたら、まずはいろいろ実践してみて。
正直、働き方革命には、企業も政府もまだまだ奥手。
でも、みんながいろいろ実験することで、社会もついてくるから。

・・・とまあ、こんな感じです(かなりざっくりと)。

個人的に、2016年の自分はまさに「『職業・落合絵美』を目指す。」と言って、自分の軸って何なのか、を見つめては実践に移した1年だった。
2017年の自分に思いをはせるこの時期に、この本に出会えたのは本当に良かったと思う。

こういったテーマがお好きな方、ぜひご一読くださいませ。

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